AMINO EVIDENCE

アミノエビデンス

【スポーツ】運動時の筋損傷予防と造血作用

大学陸上選手のアミノ酸摂取量の研究

12種アミノ酸混合物であるAVP2200を1日当たりどのくらいの量を摂取すると血液指標に変化が得られるかを調べるために、大学陸上部に所属する男子学生13名を対象に、6カ月間にわたって用量反応性の研究を実施した結果、

ワンポイント解説

アミノ酸は本当に効くのか?
同じ研究者がアミノ酸の効果について実験し、サッカー選手に「効いた」が長距離選手に「効かなかった」と報告している。 なぜこのように相反する結果になるのか詳しく調べると、プロトコールに問題があると推察された。なぜならば人を対象とした場合、プロフィールはもちろんのこと生活環境(食べ物や運動量など)が著しく異なるからである。動物を対象とした研究では、極めて厳格にプロトコールを管理できるが、人を対象とした場合は難しいのが現実であり、その実験期間が長期にわたるとなおさらのことである。
そこでプロフィール(年齢・身長・体重)および運動量・食事等を比較的同一にすることに留意し、大学陸上部の選手を対象として実験を行うことにした。その結果、「アミノ酸の摂取量がある一定以上であれば、体感の変化が血液指標の変化と相関する」といった興味ある知見が得られた。これはアミノ酸の臨床栄養で見られた知見と同じ傾向であることがわかった。

アミノ酸一口メモ

エビデンス

[結果]
1)12種アミノ酸混合物であるAVP2200の摂取量と血液指標の変化には用量反応性が認められた。

2)AVP2200を13.5g/日摂取した後には、非摂取期間に比べて、(1)赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットが有意に増加し、(2)クレアチンキナーゼ(CK)値は減少した。また、(3)早朝空腹時の血糖値が高くなり、(4)血中尿素窒素(BUN)は減少傾向を示した。

[考察]
12種アミノ酸混合物AVP2200の摂取により、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットが有意に増加するなどの造血効果がみられたことは、有酸素運動能力の向上につながる。一方、CK値の低下は筋肉の炎症の回復が早いことを示唆しており、アスリートにとっては好ましいことである。

早朝空腹時の血糖値が高くなったことは、グリコーゲンの貯蔵量が増加したこと、あるいは解糖系におけるエネルギー代謝効率が良くなってグリコーゲンが温存できるようになったことを示している。運動後にグルタミン+糖を摂取すると骨格筋のグリコーゲンの回復が早くなるという報告5)や、アルギニン+糖を摂取すると炭水化物のエネルギー消費量が減少してグリコーゲンの回復に役立つという報告6)もある。今回摂取したAVP2200にはグルタミンとアルギニンが含まれていること、またロイシンには骨格筋における糖取り込み促進作用3)、グリコーゲン合成促進作用4)があると報告されていることから、これらの作用が発揮されたと考えられるが、今後さらに詳しく検討していきたい。

これまでの研究では、カロリー摂取量を一定にしてタンパク質の摂取量だけを増やした場合、造血作用、血糖値、血清アルブミン値には変化がみられず、BUNが有意に増加したという報告7)があることから、タンパク質を多く摂取しても栄養状態の改善は得られず、むしろBUNが増加して肝臓、腎臓の窒素代謝に負荷をかけていることがわかる。一方、BCAAを多く含むアミノ酸混合物を肝臓病患者に経口投与したところ、ヘモグロビン、赤血球、ヘマトクリットなどが増加し、アルブミンも増加したという報告8,9)があることから、タンパク質を摂取するよりもアミノ酸混合物を摂取した方が貧血の改善などに有効であると考えられる。
文献
1)Hara K, et al:J Biol Chem 273:14484-14489, 1998.
2)Blommaart EFC, et al:J Biol Chem 270:2320-2326, 1995.
3)Nishitani S, et al:Biochem Biophys Res Commun 299:693-696, 2002.
4)Armstrong JL, et al:J Biol Chem 276:952-956, 2001.
5)Bowtell JL, et al:J Appl Physiol 86:1770-1777, 1999.
6)Yaspelkis BB and Ivy JL:Int J Sports Nutr 9:241-250, 1999.
7)Cheng AHR, et al:Am J Clin Nutr 31:12-22, 1978.
8)Suga M, et al:JJPEN 16:221-226, 1994.
9)Watanabe A: JJPEN 11:105-107, 1989.

出典:「アミノエビデンス255―なぜ効くのか・何に効くのか」