【スポーツ】マラソン時の疲労軽減
疲労回復効果があります。
肝機能改善作用、筋肉の炎症軽減作用があります。
実業団陸上長距離選手のアミノ酸摂取研究
スポーツ選手がアミノ酸サプリメントを摂取したときに、運動のパフォーマンスや生理学的応答にどのような変化をきたすかを明らかにするために、アミノ酸摂取研究が行われた。第1回目の今回は、マラソン選手がレースの1週間前から12種アミノ酸混合物であるAVP3600を摂取した場合に、どのような効果があらわれるかを検討した結果、
ワンポイント解説
マラソン選手は体が丈夫だから毎日30kmから40km走っている!?
マラソン選手は体が丈夫だから毎日30kmから40km走っている!?と信じていたが、マラソン前後の血液データを見て驚いた。実際は毎日過酷なトレーニングを行っているために、血液指標からは肝機能への負担が大きく、体タンパク質も分解してエネルギーとして利用されていることが示唆された。さらに低栄養や貧血傾向を示す選手も見られた。血液データだけを見ると肝硬変?というのが実態であった。病院内の治療では、BCAA製剤が栄養状態・肝性脳症の改善に用いられる。しかし、彼らは病院外にいる健康体?であるために上記製剤を用いることはできない。どうすれば問題を解決できるか試行錯誤した「エビデンス」を8回にわたり紹介したい。
アミノ酸一口メモ
エビデンス
[結果]
1)アミノ酸群ではプラセボ群に比べ、レース後のGOTおよびGPTが低値を示し、γ-GTPはレース前日から低い傾向を示したことから、肝臓の負担が軽減されていることが推察された。
2)アミノ酸群では、CKもレース後に低下傾向を示したことから、筋肉の炎症が軽減されていることがうかがわれた。
3)アミノ酸群ではプラセボ群に比べ、血漿中の芳香族アミノ酸濃度がレース直後に低値を示した。
[考察]
マラソンを走り終えた選手は肝機能検査において異常値を示すことが多い。また、マラソン前の安静時においてもCK値やLDH値が基準値を超えていることがしばしばある。すなわち、慢性的に肝機能に過度のストレスがかかった状態にある。
マラソンのような過酷なスポーツでは、そのエネルギー源としてグリコーゲンや脂質ばかりでなく、体タンパク質も分解され、特に骨格筋等の主要成分である分岐鎖アミノ酸(BCAA)は筋肉でエネルギー源として利用されてしまう。その結果血漿中のBCAA濃度は、AAA濃度に比較して相対的に低下する。BCAAとAAAの比(Fischer比)が低下すると、血液脳関門を通過するAAAが増加して脳内セロトニンなどの合成が亢進する。脳内疲労物質であるセロトニンは気力や集中力を低下させる ことから、特にスポーツ選手ではFischer比を増加させてセロトニンの生成を抑制する必要がある。また、Fischer比が低下すると、肝におけるタンパク質合成能が低下することもわかっており、これが疲労回復を遅くする原因となる。
今回の研究では、1週間という短期間ながら、アミノ酸群ではレース後のγ-GTP値やCK値がプラセボ群に比べて低い傾向を示したことから、AVP3600が肝機能改善作用、筋肉の炎症軽減作用を有していることがわかる。また、アミノ酸群ではレース直後のAAAがプラセボ群に比べて低値を示したことは、疲労回復力が早いことを示すものと考えられる。実際、アミノ酸群の60%が、通常よりも疲労回復が早いと報告している。
文献
1)Hassmen P, et al: Branched-chain amino acid supplementation during 30-km competitive run: mood and cognitive performance. Nutrition 10: 405-411, 1994.
2)Ohashi H, et al: 四塩化炭素慢肝障害ラットにおける分岐鎖アミノ酸の栄養効果.日本消化器病学会誌 86: 1645-1653, 1989.
出典:「アミノエビデンス255―なぜ効くのか・何に効くのか」