脂質異常症中高年を対象に、牡蠣肉を酵素加水分解して得られたアミノ酸・ペプチドの摂取でどのような生理学的応答が見られるか、プラセボ摂取群との比較による検証を行った。
[結果]
1)アミノ酸・ペプチドを摂取することにより、プラセボ摂取と比較して、血中のVLDLが有意に低下し、HDLコレステロールが有意に増加した。
2)アミノ酸・ペプチドを摂取することにより、プラセボ摂取と比較して、血中の中性脂肪の上昇が抑制された。
[考察]
以前の研究で牡蠣肉を酵素加水分解して得られたアミノ酸・ペプチドの摂取によるVLDLの低下や血管硬度の低下を報告した。今回用いた牡蠣肉酵素分解物は酵素の種類を変えることでペプチドをより低分子化した点が特徴である。
アミノ酸・ペプチドの摂取によってVLDLの低下、HDLコレステロールの増加が確認された。プラセボ摂取群との有意差も見られたことから、牡蠣肉由来のアミノ酸・ペプチドの効果がより明確となった。
アミノ酸・ペプチドの摂取で中性脂肪の上昇抑制が確認された。これまでに前臨床試験で牡蠣のアミノ酸・ペプチドが肝臓の脂肪酸合成酵素活性を抑制し、肝臓の中性脂肪を低減することが報告されている 1)が、以前の研究ではヒトにおいて牡蠣のアミノ酸・ペプチドの摂取による中性脂肪の低減は確認されなかった。低分子化したペプチドがヒトにおいてより強く肝機能に働きかけ、肝臓での過剰な中性脂肪合成を調整している可能性が考えられる。
本試験において脂質異常症中高年の脂質異常の改善が確認され、アミノ酸・ペプチドの摂取は、健康維持、生活習慣病予防に有用であると考えられた。牡蠣のペプチドをより低分子化することで、より高い効果が確認されたことから、アミノ酸・ペプチドに効果があるものと予測される。今後は牡蠣のペプチドに含まれる様々な機能性ペプチドの同定とさらなる検証に期待したい。