AMINO EVIDENCE

アミノエビデンス

【健康】脂質代謝の改善

中高年におけるアミノ酸・ペプチド摂取研究(第3報)

中高年を対象に、牡蠣肉を酵素加水分解して得られたアミノ酸・ペプチドの摂取でどのような疲労の変化が見られるか2つの試験を実施し、検証を行った。

ワンポイント解説

ヒトヘルペスウイルス-6はほとんどの人が1歳半までに初感染し、乳幼児期の突発性発疹(別名:知恵熱)の原因となるウイルスである。初感染後、ウイルスが増殖した後に増殖を停止し、ウイルス遺伝子が生涯保持される潜伏感染状態となる。慢性的に疲労が蓄積することによって再活性化し、唾液中へ放出されることが知られており1)、慢性疲労マーカーの1つとして期待されているウイルスである。

エビデンス

[結果]
1)アミノ酸・ペプチドを1ヵ月間摂取することにより、何も摂取していない場合と比較して、疲労自覚調査による疲労スコアが有意に改善した。
2)アミノ酸・ペプチドを3ヵ月間摂取することにより、VASによる疲労スコアが改善傾向を示し、唾液中の疲労マーカー発現量が有意に改善した。

[考察]
産業疲労研究会(日本産業衛生学会)が定める疲労自覚症しらべは、頭がおもい、いらいらするなどの合計25項目によって疲労スコアを算出できる、自覚疲労評価の調査票の一つである。 牡蠣のアミノ酸・ペプチドの摂取で、有意な疲労スコアの改善が確認された。疲労が長引くメカニズムの一つとして脂質をはじめとしたエネルギー代謝が円滑に進まないことにより体内がエネルギー不足に陥り、細胞機能修復や新規タンパク合成が行われないことが考えられている。アミノ酸・ペプチドの摂取で脂質代謝を改善し、体タンパク合成を促進することは既に報告している。アミノ酸・ペプチドがエネルギー代謝を促進し、タンパク合成を促進することにより自覚疲労の軽減に寄与した可能性が考えられる。

疲労学会が定めるVAS (Visual Analogue Scale)は、左端を「最も疲れていない状態」、右端を「最も疲れている状態」と仮定した10mmの線分上に、現在の疲労レベルをチェックしてもらう、自覚疲労評価の調査票の一つである。アミノ酸・ペプチドの3ヵ月摂取でVASによる自覚疲労の改善傾向が見られた。

牡蠣のアミノ酸・ペプチドの摂取により唾液中ヒトヘルペスウイルス-6の発現量が有意に改善した。近年慢性疲労症候群(CFS:chronic fatigue syndrome)に陥るメカニズムとして種々の環境要因(身体的・精神的ストレス)と遺伝的要因によって引き起こされる神経系・内分泌系・免疫系のホメオスタシスの低下という仮説が提唱されている。アミノ酸・ペプチドはウイルスの再活性化を抑制したことから、免疫系に影響を与え、疲労及び自覚疲労の軽減に寄与した可能性が考えられる。

最近、鶏胸肉の分解物であるイミダゾールペプチドが疲労の改善に有用であるとの報告がされた2)。イミダゾールペプチドは抗酸化作用をもつことが報告されており、体内の酸化ストレスによって引き起こされる細胞機能の低下を抑えることで、疲労改善に寄与していると考えられている。

また、以前の研究でアミノ酸混合物の摂取による慢性疲労、身体疲労の改善を報告している。今後はより効果の高いアミノ酸・ペプチドの探索や疲労改善に対するメカニズムの解明に期待したい。
文献
1) 近藤一博 : ウイルス , 55 , 9-18 : 2005
2) 清水恵一郎他 : 薬理と治療. 37 , 255-63 : 2009

出典
大江昌彦、大谷勝ら:長期的なアミノ酸サプリメントの摂取による疲労と血中酸化ストレスについて.第11回日本抗加齢医学会.2011
大谷勝他:脂質異常症中高年がペプチド・アミノ酸(牡蠣由来)を摂取する生理学的応答について(第2報).第34回臨床栄養学会.2012
大谷勝他:中高年が牡蠣ペプチド配合サプリメントを摂取する生理学的応答について(第3報)
第35回臨床栄養学会.2013
大谷勝:「アミノエビデンス255-なぜ効くのか・何に効くのか」